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ハオ丸陰陽堂弐号店幻さん

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『馬鹿に見える大物』

覇王丸、のちに剣豪と呼ばれるようになるこの男は、武蔵国の貧しい旗本の家に生まれ落ちた。
武家としての格式など、一文の得にもならないものに捉われる事を嫌い、親から強制される学問や手習いはことごとく放り出す、そんな子供であった。

しかし剣の稽古だけはよほど性にあったと見え、ずいぶん真面目に通いつめ、大人をも打ち負かすほどの腕前となり(※1)、将来が楽しみだとまで言われていた。

そんな奔放な生活をしていた覇王丸が、いくら剣を振り回そうともかなわぬ人物がいた。

若い頃は世界を旅して国学や蘭学を修めたが、年老いてからはここ武蔵国にて隠居生活を送っている老人である。かなりの知識人ではあるが、なにぶん田舎の事なので、近所からは「変わり者の先生」と呼ばれていた。勉学が嫌いな覇王丸だが、この老学者の説法には興味を持った。


「覇王丸、お前は強い。この辺りじゃお前にかなう者も少なかろう。しかしな、世界には色々な剣術もあるし、大変な剣豪もおるようじゃ。お前もまだまだ井の中の蛙、どうだ異国の話など聞きたくはないか?」


老人はそう言って覇王丸の興味を引かせ、話相手にしていた。(※2)

この学者から得る知識や雑学、様々な情報はその後、覇王丸の世界観の形成に大いに役立つ事となった。(※3)覇王丸の知識は、そのままこの学者の知識といえるだろう。

生来のセンスに加え、様々な武術知識によって近隣では覇王丸の剣にかなう者がいなくなった。

そこで彼は、強い奴が西にいると聞けば西に、東にいると聞けば東に出向き、勝利を収めるまで帰ってこない、そんな生活を送り、そして道中の出来事を土産話に、この老人の元に遊びにゆくのが習慣となっていた。(※4)


「こう、剣を放り投げて鞘に収めると、まわりの人が喜んでくれて、金まで置いてくれる。道中はそれで食ってた。だけど歌舞伎役者だかなんだかが来るとそっちにお客を取 られちまって、金になんねえや。そいつの名前は、ええと……たしか千両……狂死郎とかいったっけな。道化たふりをしたヤツだけどな、ありゃァただ者じゃねぇ」(※5)


そんな話を身振り手振りを交えながら語った事もある。


しばらく覇王丸が老人の元に現れなかった事があった。聞いてみると家にも帰ってはいない様子だったが、ある時ふらりと老人の家を訪れてこう言った。


「先生。……俺、もうここには帰って来ないかも知れない。……今まで、俺が一番だと信じてきたけど……世の中にはまだまだ適わない相手がいるんだ」


そう語る覇王丸の額には1本の赤いアザが、ちょうど刀の鞘で打たれたようなアザが残っていた。(※6)

「昔、先生がしたように、世界を回って強い奴と戦って、もっともっと強くなりたいんだ」


傷ついた若者の決意を聞いた老人は、まるで自分の息子の様に旅立ちを祝ってくれた。


数日後、覇王丸は家族と別れ、二度と訪れる事のない故郷を離れた。
まるで獲物を追いかける獣の如く、振り向きもせず急ぐような旅立ちだったと、後に老学者は語る。(※7)






(※1)
8才の時に初めて振る事を許された覇王丸は、最初の一振りで屋敷にあった石灯籠をまっぷたつにしたというエピソードを持つ。

(※2)
こういった講釈に「酒」がつきものであったため、覇王丸はすっかり酒好きになってしまったようだ。この老人から受けたものはプラス要素ばかりではなかったようだ。

(※3)
覇王丸はその外見や行動から「熱血漢」のイメージが先行するが、特に武術を中心に、なかなかのインテリなのである。裏の通称「馬鹿に見える大物」

(※4)
この時、覇王丸には「静」という名の許嫁がいたのだが、武術への好奇心が恋愛感情を上回っていたようだ。
覇王丸も決してお静が嫌いだったわけではなく、心のどこかでは愛があったハズである。

(※5)
さすが武術インテリ、世の人々には売れっ子の歌舞伎役者の顔しか見えない が、その裏の剣術者としての顔が見えたようだ。
この後も2人は商売敵として何度も顔を合わせる事となる。

(※6)
この時、覇王丸の顔にアザを残した男こそ、誰あろう柳生十兵衛である。

(※7)
許嫁のお静は覇王丸の報せを聞き、しばらくじっと考えこんでいたが、その後でしっかりと頷いていたという。涙は見せなかった。


SAMURAI SPIRITS OFFICIAL STORY
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2006.11.15 trackback(0) comment(0)

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