ハオ丸陰陽堂弐号店幻さん

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『JIPANG猛獣譚 【前編】 】

桜の花弁が、微風の中舞い散っている。

その並木林の中を悠々一人と歩む、酒瓶と刀を一振り、腰から下げた素浪人風の男が

いた。

しかし、正確には彼は一人ではなく。

そのことについて、さてどうしたものかと先ほどから考えつつ、彼、覇王丸は歩いてい

た。



「なぁ、おい。」



立ち止まり、覇王丸は声をかける。



「お前、いつまでそうしてるつもりだ?」



覇王丸のざんばらに結んだ量の多い髪の下から、

ぴょこりと黄色い尻尾がはみ出し、ぷらぷらと揺れた。



「もふもふだぁ。」



にゅっ、と声の主が顔を出す。

大きな目をくりくりさせた、緑がかった長髪の娘。

髪の中からは、ネコに似た耳がぴょこんと突き出ている。

身にまとっているのは、虎皮の模様の毛皮一枚。

二の腕と腿は剥き出しで、手足には、獣のそれを模したか爪のついた手袋と履物をは

めている。

満面の笑みを浮かべた娘は、覇王丸の背中に再びしがみついた。

傍目には、覇王丸がこの珍妙な姿の娘を負ぶっているように見えるだろう。



(好きでやってるわけじゃねぇけどな。)



「わぁ~い。ふさふさだぁ。」

ネコに似た耳を持った娘は、覇王丸が先ほど問うた言葉を全く意に介した様子もなく、

いまだ立ち止まっている彼の背中ではしゃいでいた。

もふもふだの、ふさふさだの、どうやら覇王丸の髪のことを言っているらしい。

「いや、重てぇんだけどな。」

「ねぇパクパク!あの時といっしょだよね。コイツといっしょでぇ、もふもふだった。」




(やっぱり聞いてねぇか、こいつ。)




道中、たまに覇王丸が話し掛けてみても、この娘は注意を払うこともなく、パクパクと

呼ぶ動物・・・・・・娘と同じく、覇王丸に器用にしがみ付いている一匹のサル

・・・・・・にだけ話し掛けている。

覇王丸は肩を竦め、軽く息を吐いた。

「俺はこれから寺に行くんだけどな。お前は、行く所か帰る家はねぇのか。」

帰る家があったとしても、どう考えてもこの付近ではあるまい。

日ノ本にいくつの國があっても、こんな格好をした娘がいるはずもない。

「え? 帰る?? ボク、タンジルストーン見つけるまでは帰れないンだー。お父さンに

 怒られちゃうんだもン。」

覇王丸は、首を捻って振り向き、妙な言葉を口にした娘を見下ろしつつ目を瞬く。

「探し物か? だったらいつまでも俺にしがみついてねぇで、とっとと探しに行きゃいいだ

 ろうが。」

「うン。行かなくちゃいけないのわかってるケドー、もふもふ気持ちいいンだもン。

 それにね、パクパクも止めなかったし。それでいいかなーッて思ったンだー。歩かなく

 てすンで楽だもンなー。」

「おいおい。俺はお前の乗り物じゃねえぞ。」

ここいらで背中からはがして置いていった方がいいか、と思った覇王丸だったが、ふと

娘の言葉に気にかかる部分があった。

「お前、その”ぱくぱく”ってのか? 猿が止めなかったって言ったな? お前猿と話をし

 てるのか?」

「うン。ボクねー、動物の言葉わかるンだよー。でもボクだけじゃなくてね、

 村の子は結構わかる子いるみたいなンだー。大きくなッてわかンなくなる子もいる

 けど、」

話しながら娘は、覇王丸の肩にすとんと顎を乗せて笑う。

「もぉッとすごくなるとー、精霊さまの言葉がわかるよになる人もいるみたい。タム兄ち

 ゃンみたいにね。」

「タム兄ちゃん?」

「タム兄ちゃンすごいンだぞ。村の勇者でいッちばン強いんだー。」

獣の耳の娘は、覇王丸の顔の横でにこにこと笑っている。



昨年、覇王丸が出会って剣を交えた剣士たちの中に、鬼のような面をつけ、巨大な刀

を携えた異国の剣士がいた。

その剣士が、名前をタムタムと名乗った。



彼を兄、と呼んだと言うことは妹なのだろうが。




(あまり似てねぇな。まぁ、あいつの顔を直に見たわけでもねえが。)




「で、その村の勇者の兄ちゃんは今一緒じゃねえのか?」

「うン。ボク、タム兄ちゃンにも黙ッて出てきたよ。いッしょなのはパクパクだけなー。

 タム兄ちゃンすッごく優しいけど、悪いことしたら怒られちゃうンだもン。

 タンジルストーン、持ち出しちゃダメッて言われてたしぃ。だからね。早くタンジルスト

 ーン見つけて帰らなきゃ。」

また無鉄砲な娘だ。しかし、それよりも気になったことがある。




 (・・・・・・奴の國の女ってのは皆こういう格好か? どういう慣わしなのかねぇ。)




覇王丸の考えなど全く気にする様子もなく、娘は一人はしゃぎつつ話し続ける。

「パクパクはねー、ボクの子分だから。だからボクのためにいろいろ便利なことするの、

 当たり前なンだぞ。

 ここに来る時もどの船に乗ッたらいいかとかぁ、ここに来てからも悪いヤツらに見つか

 らないようにどーすればいいかとか、どこで寝泊りしたらいいかとか、ちゃあンと

 教えてくれるンだー。」

「おいおい。」

それじゃお前より猿の方が物知り、ってことになるんじゃねえのか?

言おうとして、止めた。

しかしそれが事実だとするなら、この猿はまるで娘の親のように世話を焼いていること

になる。




 (面白いこともあるもんだな。)




「それはわかったから、そろそろ降りてその何とか言う探し物を見つけに行け。俺はこれ

 から行くところがあるんでな。」

「え~。」

「ま、お前が来たいってんなら別に止めやしねぇが、寺にはおっそろしい奴がいるから

 な。泣くハメになっても知らねぇぜ?」

覇王丸は、娘に笑いかけてみせる。

ネコの耳をつけた娘は、大きな目をぱちぱちと瞬いた。

「おッそろしいヤツ? ッてなンだ~?? ボクそンなの平気だゾ。

 もふもふだッて、危ないから近付くなってタム兄ちゃンに言われてたけどー、ちゃあン

 とボクになついたもンなッ。ね、パクパク。」

猿が、目と歯を剥き出しにした。

娘が語った言葉から察せられることは、もふもふというのはどうやら、娘の故郷の動物

らしい。




 (やれやれ。獣の毛と一緒にされるたぁな。)




心中、覇王丸は僅かに苦笑する。

「なーなー、もふもふ。もふもふはその、おッそろしいヤツのこと怖いのか~?」

娘は覇王丸の顔を覗き込みつつ言った。

「ん?」

娘の顔と真正面から向き合う形になった。

「俺は覇王丸ってんだ。」

「んじゃ、マルはそのおっそろしいヤツの前から尻尾巻いて逃げ出すのか?」

娘は無邪気に笑う。

「奴が怖くねぇ、と言ったら嘘になるだろうが。」

覇王丸は、腰の日本刀・河豚毒の柄に手をかけ、娘の目を見返した。

「尻尾巻いて逃げるのはお断りだな。」

娘は、きょとんとした顔で覇王丸を見る。

「ふ~ン。だったらマルはタム兄ちゃンくらいかどーかわかンないけど、勇気があるから

 立派な戦士ダナ!」

娘は体に弾みをつけて、次の刹那に覇王丸の肩に飛び乗っていた。

肩車をさせられた格好だ。

「それじゃ、チャムチャムもマルといっしょにおっそろしいヤツを見に行くぞッ!」

「おいこら。」

・・・・・・まぁ、構わんか。

娘を肩車し、背中に猿をしがみつかせたままで、覇王丸は再び歩き始める。


≪つづく≫


SPECIAL THANX: 鷹覇臣 様 「鳥獣GIGA」123456HIT斬りリク小説

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2006.11.15 trackback(0) comment(0)

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